グローカル・ハタラクラスぐんま
プロジェクト
外国人住民の文化的多様性を考慮した協働実践型研究

科学研究費補助金 基盤研究(B) 特設分野
「外国人住民の文化的多様性を考慮した
高齢期ライフプラン作成のための 協働実践型研究」

取組の概要OVER VIEW

  • HOME
  • 取組の概要

文化的・社会的多様性を考慮した「高齢期」に備える地域実践を

イメージイラスト

本取組は、定住化あるいは帰化を予定する外国人住民が、日本で安全・安心に高齢期に備えるライフプランを設計し実践できるように、外国人住民、日本人住民、関係者による協働型実践研究(Community-based Participatory Research、以下CBPRと記す)を導入するものです。その主たる特徴は、比較社会学の観点から、外国人住民の視点に立った「高齢期」の理解を図り、文化的・社会的多様性を考慮したCBPR実践を展開することにあります。このCBPR実践のアウトカム評価及びプロセス評価により、人的多様性に配慮した高齢期ライフプラン作成のためのCBPRの成果と課題、および方向性を明らかにしていきます。

外国人住民の間に増加している「高齢期」該当者

総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2019年1月1日現在)によれば、日本人住民の老年人口(65歳~)は 3,501万4,064人で、その総数の28.1%を占めています。外国人住民の老年人口は171,177人で、その総数の6.4%を占めています。老齢人口が外国人住民の総人口に占める割合は、日本人住民の場合の4分の1程度です。しかし、その老年人口は、日本人住民の増加率の2倍を超えはじめ、今後も同様以上の増加率で増え続けると見込まれています。

グラフ

多民族・多言語諸国では、高齢期の移民の生活実態と支援に関するさまざまな研究が構築されています。これらの研究では、対象者の文化的ちがいに配慮した「高齢期」へのとらえ方の理解と、対象者が置かれている社会的・制度的状況の理解に基づく、地域ぐるみの共生・協働の支援が提唱されています。しかしながら、我が国は、外国人住民の「高齢期」についての研究は十分に蓄積されているとは言い難い状況にあります。その理由は、外国人老齢人口が占める比率が極めて低く、そのニーズが把握されてこなかったことにあると考えられます。

外国人住民が異国の地で「高齢期」を迎えるということ

一般に、「高齢期」を迎えるにあたり、何を、どのように準備をしておかなくてはならないのかを、具体的かつ計画的に考えるのは、とても難しいことです。予測不可能なことも起こります。家族や社会の変化や、当事者の健康状態や経済状態の変化にも対応しなくてはなりません。その複雑さのため、不安も生じやすい高齢期にどう備えるか。その備えを、生まれ育った文化や制度が異なる異国の地、日本で、進めていくことはさらに困難なことではないかと推測されます。

世界保健機関憲章前文 (日本WHO協会仮訳)には、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。人種、宗教、政治信条や経済的・社会的条件によって差別されることなく、最高水準の健康に恵まれることは、あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです」と記されています(※)。私たちは、日本でともに暮らし働く生まれ育った文化や社会が異なる人々が、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)で「高齢期」が迎えられる一助となるように本取組を進めていきたいと考えています。

※「世界保健機関(WHO)憲章」より 公益社団法人 日本WHO協会ホームページ
 ⇒ https://www.japan-who.or.jp/commodity/kensyo.html

方法としてのCommunity-Based Participatory Research(CBPR)

日本でともに暮らし働く生まれ育った文化や社会が異なる人々が、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)で「高齢期」が迎えられるようにするためには、ともに暮らし働く多様な住民の声を傾聴することが不可欠です。

そもそも、「高齢期」をどうとらえているのか、その備えについてどう考え、行動するのかについて、その人の視点を理解し、その考えを尊重し、多様な考え方を持つ人たちで構成されるコミュニティとしてどう支え合っていくのかを考える必要があります。また、「高齢期」を安心安全に過ごすための健康、お金、防犯・防災等、専門家からの指導や関係機関とのつながりも必要となります。

イメージイラスト

そこで、本取組では、「高齢期」の備えに必要となる課題を抽出し、外国人住民と日本人住民、専門領域の人がともに集い、それぞれの見方考え方を尊重しながら、コミュニティとして課題解決を図る方法として、Community-Based Participatory Research(以下、CBPRと略す)を採用しました。CBPRは、コミュニティにある課題について、コミュニティの内部にいる人々と、コミュニティの外部にいる専門家(専門職や研究者等)が、協働で解決に導く社会調査法のひとつで、主に、公衆衛生の領域で活用されています。CBPRでは、(1)健康課題を感じとる、(2)メンバーを集め組織をつくる、(3)健康問題を明確にする、(4)計画をつくり実践する、(5)活動を評価し普及する、という5つの要素で構成されますが、これらの5つの要素が、循環し反復しながら発展していくことで、課題解決に向かうと考えられています(CBPR研究会 2010, p.19)。

CBPRの要素である「パートナーシップ」や「協働性」を築くため、CBPRには次の9つの原則が設定されています。(CBPR研究会 2010, p.13)。

[原則1] 地域を、共通の価値観や帰属意識を持つ集団(コミュニティ)として捉えよう
[原則2] コミュニティの健康問題を解決するために、コミュニティの強みや資源を用いよう
[原則3] 活動のすべての段階において、対等なパートナーシップを目指そう
[原則4] それぞれの知識や技術を共有して互いに学び合い、能力を高めよう
[原則5] 活動の成果を、コミュニティに還元しよう
[原則6] 生態学的(エコロジカル)な視点で、コミュニティの問題を多角的に捉えよう
[原則7] 活動は、循環し繰り返しながら発展させていこう
[原則8] 結果を利用しやすい形でコミュニティに還元し、広く社会に普及させよう
[原則9] 長期的で持続できる活動として取り組もう

この取組は、科学研究費補助金 基盤研究(B) 特設分野「外国人住民の文化的多様性を考慮した高齢期ライフプラン作成のための協働実践型研究」(課題番号26310102 研究代表者 結城恵)により実施しました。

外国人住民の文化的多様性を考慮した高齢期ライフプラン作成のための協働実践型研究

住所

〒371-8510
群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地
TEL027-220-7382
TOPへ