本取組においてCBPR実践を展開する対象地域は、群馬県です。群馬県は、外国人住民の高齢化率が著しく高くなっている地域のひとつです。右のグラフに示されるように、2014年からの老年人口増加率は、2017年以降急速に高まっており、2019年は全国平均の2倍を上回る58.1%となっています。
群馬県には、在留資格が永住者、定住者、あるいは日本人の配偶者等、滞在期間が長く、「高齢期」を日本で迎える可能性のある住民の比率は比較的高い傾向にあります。群馬県の統計によれば、2019年12月末現在の在留資格別の上位5資格の人数(構成比)は、「永住者」が19,770人(32.9%)、「技能実習」が10,683人(17.8%)、「定住者」9,357人(15.6%)、「技術・人文知識・国際業務」3,848人(6.4%)、「日本人の配偶者等」3,398人(5.7%)となっており、「高齢期」を日本で迎える可能性は、「技能実習」を除く全体の約6割を占める外国人住民にあると考えられます。
そこで、本取組は、群馬県の代表的な外国人集中地域である群馬県伊勢崎市と太田市で、ブラジル、ペルー、フィリピン、中国、インド等、多様な国籍の外国人住民が集まる場所で、CBPR実践を展開しました。
本取組は、2014年度から現在まで継続して実施しています。その取組方法には、大きく分けて、(1)「高齢期」への備えに関する不安要因の抽出と(2)不安要因を解消するためのCBPR実践の展開です。 本取組は、月2回・日曜日に開催される、群馬大学「ハタラクラスぐんま」地域日本語教室と連携し、 ワークショップ形式で実施しています。
(1)「高齢期」への備えに関する不安要因の抽出
外国人住民数が県内で最も多い群馬県伊勢崎市でアンケート調査とヒアリング調査を実施しました。 その結果をもとに、外国人住民が群馬県で「高齢期」に備える上での不安に感じている事項を抽出・ 整理しました。
(2)不安要因を解消するためのCBPR実践の展開
上記(1)で抽出された「高齢期」の備えに関する不安要因をテーマに設定し、CBPR実践を展開しました。CBPR実践は、CBPR研究会が示す「CBPRのすすめ方」に則り、(1)健康課題を感じとる、(2)メンバーを集め組織をつくる、(3)健康問題を明確にする、(4)計画をつくり実践する、(5)活動を評価し普及する、という5つの取組を、循環させ反復するように展開しました(2010, pp.11-12)。